頭痛の治療について

現在、頭痛の治療は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)といわれている薬剤が幅広く使用されています
なお、医療用のNSAIDs製剤は、頭痛の適用はありませんが実際の臨床の場では効果があるとされて処方されています。
代表的なNSAIDsは

  • ロキソプロフェン(ロキソニンなど)
  • イブプロフェン(イブなど)
  • アセチルサリチル酸(アスピリンなど)
  • エテンザミド(セデスなど)

などがあります。
NSAIDsは打撲などで炎症を起こした部位に発現するシクロオキシゲナーゼ2(COX-2)という酵素の活性を阻害し、
起炎物質・発痛増強物質であるプロスタグランジン類の合成を阻害することによって効果を発揮します。
多くのNSAIDsはCOX-2以外にも常時体内に存在するCOX-1の活性も阻害するため、胃腸障害の副作用が発現します。
なお、アセトアミノフェンはCOXの活性を阻害しますが、その作用は弱く抗炎症作用がほとんどなく、NSAIDsには分類されていません。
アセトアミノフェンの作用機序は、中枢神経におけるCOX阻害と考えられていますが、詳細な機序は未だに解明されていません。

薬剤の使用過多による頭痛

【MOH(Medication-overuse Headache)】
MOHは一次性頭痛を持つ患者において、薬剤の使用過多に関連して新しいタイプの頭痛が発現した状態、
あるいは、以前から存在する一次性頭痛が著明に悪化した状態。
NSAIDs(ロキソニン、イブなど)等の鎮痛薬を、頭痛の治療に長期にわたって使用しているにもかかわらず、
頭痛が治らない・悪化する場合は、MOHの可能性があります。
以下のMOHの診断基準に該当する場合や、該当しなくてもなかなか頭痛が改善しない場合は、
鎮痛剤の継続の可否を医師に相談することをお勧めします。

 

「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛、MOH)」の診断基準(ICHD-3)

  1. 以前から頭痛疾患を持つ患者において、頭痛は1ヶ月に15日以上存在する
  2. 1種類以上の急性期または対症頭痛治療薬を3ヶ月を越えて定期的に乱用している
  3. ほかに最適なICHD-3の診断がない(ICHD-3:International Classification of Headache Disorder-3)
〈薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛、MOH)における服薬日数〉
8.2 薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛、MOH) 服薬日数
8.2.1 エルゴタミン乱用頭痛
8.2.2 トリプタン乱用頭痛
1ヶ月に10日以上
8.2.3 非オピオイド系鎮痛薬乱用頭痛
8.2.3.1 パラセタモール(アセトアミノフェン)乱用頭痛
8.2.3.2 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:ロキソニン、イブなど)乱用頭痛
8.2.3.2.1アセチルサリチル酸(アスピリン)乱用頭痛
その他の非オピオイド系鎮痛薬乱用頭痛
1ヶ月に15日以上
8.2.4 オピオイド乱用頭痛
8.2.5 複合鎮痛薬乱用頭痛
8.2.6 単独では乱用に該当しない複数医薬品による薬物乱用頭痛
8.2.7 特定不能または乱用内容未確認の複数医薬品による薬物乱用頭痛
8.2.8 その他の治療薬による薬物乱用頭痛
1ヶ月に10日以上