花粉症「アレルギーポータル」より

花粉症の症状について

花粉症の症状は、水のような「鼻水」と、繰り返す「くしゃみ」、「鼻づまり」が3大主徴です。目にもかゆみや異物感が生じ、花粉飛散量に比例して症状が悪化する傾向があります。
鼻症状は呼吸がしづらくなるため、集中力の低下やよく眠れないなど、勉強や仕事、家事に大きな影響を及ぼします。
また、花粉症の人の中には、果物や生野菜を食べた後、数分以内に唇、舌、口の中や喉にかゆみやしびれ、むくみなどがあらわれることがあります。これは、口腔アレルギー症候群と呼ばれており、花粉にあるアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)と、果物や野菜に含まれるアレルゲンが似ているために起こります。

花粉 交差反応に関与する
主なプロテインファミリー
交差反応が報告されている主な食物
カバノキ科 ハンノキ属 ハンノキ
オオバヤ
シャブシ
Bet v1ホモログ
(別名:PR-10)
プロフィリン(頻度は低い)
バラ科🌹(リンゴ、モモ、サクランボ、ナシ、アンズ、アーモンド)
マメ科🫛(大豆、ピーナッツ、緑豆もやし)
マタタビ科🥝(キウイフルーツ)
カバノキ科(ヘーゼルナッツ)など
カバノキ属 シラカンバ
ヒノキ科 スギ属 スギ Polygalacturonase ナス科🍆(トマト)
イネ科 アワガエリ属
カモガヤ属
オオアワガエリ
カモガヤ
プロフィリン ウリ科🍉(メロン、スイカ)、ナス科(トマト)、マタタビ科(キウイフルーツ)ミカン科🍊(オレンジ)、マメ科(ピーナッツ)など
キク科 ブタクサ属 ブタクサ プロフィリン ウリ科🍈(メロン、スイカ、ズッキーニ、キュウリ)
ヨモギ属 ヨモギ プロフィリン セリ科🥕(セロリ、ニンジン、スパイス類:クミン、コリアンダー、フェンネルなど)、ウルシ科(マンゴー)など

重症度について

花粉症の重症度は、鼻水をかむ回数とくしゃみ🤧が生じる回数、鼻づまりは口呼吸の回数で診断されます。鼻水とくしゃみは密接に関わるので、まとめて「鼻水・くしゃみ型」、鼻づまりが他の症状より強いと「鼻づまり型」、3つの症状が同様に強いと「充全型」と分類します。
花粉症は重症でも生命に関わることはありませんが、花粉症と食物アレルギーが合わさった口腔アレルギー症候群ではまれですが、全身に症状が出現するアナフィラキシー反応が生じる場合があり、医師の正確な診断・治療が必要となります。

程度および重症度 くしゃみ発作*または鼻漏*
++++
21回以上
+++
11回〜20回
++
6回〜10回
+
1回〜5回

+未満
鼻閉 +++ 1日中完全につまっている 最重症
+++ 鼻閉が非常に強く口呼吸が1日のうちかなりの時間ある 重症
++ 鼻閉が強く口呼吸が1日のうちときどきある 中等症
+ 口呼吸は全くないが鼻閉あり 軽症

治療などについて

花粉症の治療は、アレルギー性鼻炎に対する治療と同じであり、治療には「薬物療法」、「アレルゲン免疫療法」、「手術療法」の3つがあります。また、症状の原因となる花粉のアレルゲンを回避する環境整備も重要です。
薬物療法では鼻水を抑える抗ヒスタミン薬の飲み薬や、鼻の炎症を抑える点鼻ステロイド薬、鼻づまりを改善する作用があるロイコトリエン受容体拮抗薬などが用いられます。抗ヒスタミン薬は眠気などの副作用がありますが、近年は眠気の出にくい薬もあります。
目の症状には、花粉に曝露して生じる各種の化学伝達物質(ケミカルメディエーター)に対するメディエーター遊離抑制薬や、抗ヒスタミン薬の点眼薬が用いられます。花粉飛散量が増えて症状が悪化してきたら、目のアレルギー性炎症に対して点眼ステロイド薬を用いる場合もあります。点眼ステロイド薬を用いる場合は眼圧上昇などの副作用を確認するために眼科専門医による定期的な検査が必要です。
アレルゲン免疫療法は、減感作療法とも呼ばれていましたが、原因となるアレルゲンを投与して、体のアレルギー反応を弱める治療です。注射製剤と舌下製剤(舌下錠)があり、舌下錠では日本ではスギ花粉とダニが保険適用になっています。治療は数年以上必要であり、根気のいる治療ですが、薬物療法で副作用が出るために治療が続けられない患者さんや、薬物療法だけでは症状が抑えられないような患者さんでは、免疫療法が考慮されます。
手術療法は、鼻の粘膜をレーザーで凝固する下鼻甲介粘膜焼灼術などがあります。薬物療法でも症状が抑えられない場合などに考慮される治療です。

花粉症における鼻や目のケア

⑴ 鼻のケア

  • 鼻の洗浄
    鼻に入り込んだ花粉やホコリなどは、洗い流すのが効果的です。ただし、水道水は塩素などを含んでいて鼻の粘膜を傷つけてしまうので、体液に近い組成の市販の生理食塩水を利用してください。
  • 鼻の粘膜の保護
    繰り返して鼻をかむと鼻が荒れますので、荒れてしまったら白色ワセリンなどを塗ってください。保湿ティッシュペーパーで鼻をかむことも有用です。
  • 室内の加湿
    鼻腔に炎症があると粘膜機能が低下するので、室内を加湿して水分を補ってください。空気が乾燥しているときはマスクが有用です。
  • マスク
    マスクは、花粉の飛散の多いときには吸い込む花粉をおよそ3分の1から6分の1に減らし、鼻の症状を少なくさせる効果が期待されています。また、花粉症でない人も、花粉を吸い込む量を少なくすることで、新たに花粉症になる可能性を低くすることが期待されています。ただし、風が強いとマスクをしていても鼻の中に入る花粉は増えます。マスクをしていても完全防備にはならないので過信は禁物です。

⑵ 目のケア

  • 目の洗浄
    花粉やホコリなどの異物は、洗い流すのが効果的です。ただし、目は表面が涙で守られており、水道水で目を洗うことで細胞が傷つくことがあり、また涙も洗い流してしまうので、市販の人工涙液を利用してください。
  • 目の疲労の回避
    長時間にわたりテレビを見続けることやパソコンで作業を続けることは目に負担をかけてドライアイなどの原因になるだけでなく、めまいや頭痛、睡眠障害などの心身に健康障害があらわれるVDT症候群(visual display terminal syndrome)を招いてしまいます。目から画面(モニター)まで50cmくらい離すようにして、1時間見続けたら15分間程度の休憩を設けてストレッチなどで身体をほぐすようにしましょう。また、目に炎症があるときはそれだけで目に負担をかけるので、コンタクトレンズの使用を控えてメガネをかけ、意識的に目を休めてください。目に限りませんが、規則的な生活を送って十分な睡眠とバランスのよい食事を心がけてください。