検査の精度について
検査で陽性になった時に、本当に病気に罹っている確率は?
現在、新型コロナウイルス感染症や各種癌などで、様々な検査が実施されていますが、
検査結果が陽性になった場合に、本当にウイルスに感染している、癌である確率はどの程度なのでしょうか?
ちょっと計算してみましょう
とある疾患の検査の精度(感度:86.3%、特異度:90.8%)を用いて計算してみる。
検査の対象となる疾患の有病率を100人に1人(1%)とするとき、この検査を10万人が受けたとすると、
- 検査が陽性で本当に罹患している人は863人(100,000のうち癌患者は1%なので1,000人で感度が86.3%なので863人)
- 陰性だけど罹患している人は137人(1,000-863=137)
- 陰性で罹患していない人は89,892人((100,000-1,000)×0.908(特異度が90.8%)
- 陽性だけど罹患していない人は9,108人((100,000-1,000)-89,892)
で、検査が陽性になった人は9,971人でそのうち本当に罹患している人は863人。
よって、検査で陽性になったけど、本当に罹患している確率(陽性的中率(PPV:positive predictive value))は
8.66%となります。(863/9971×100=8.66)思いのほか確率は高くないですね。
検査の結果 | |||
---|---|---|---|
陽性 | 陰性 | 合計 | |
罹患している | 863 | 173 | 1,000 |
罹患していない | 9,108 | 89,892 | 99,000 |
合計 | 9,971 | 90,029 | 100,000 |
このように、ある程度感度、特異度が高くても陽性的中率はそれほど高くなりません。
陽性的中率の値に大きく依存しているのは事前確率、今回の場合は有病率になります。
例えば有病率を10%にすると
検査の結果 | |||
---|---|---|---|
陽性 | 陰性 | 合計 | |
罹患している | 8,630 | 1,730 | 10,000 |
罹患していない | 8,280 | 81,720 | 90,000 |
合計 | 16,910 | 83,090 | 100,000 |
となり、
- 検査が陽性で本当に罹患している人は8630人(100,000のうち罹患者は10%なので10,000人で感度が86.3%なので8630人)
- 陰性だけど罹患している人は1370人(10,000-8630=1370)
- 陰性で罹患していない人は81720人((100,000-1,0000)×0.908(特異度が90.8%)
- 陽性だけど罹患していない人は8,280人((100,000-1,0000)-81,720)
よって、陽性的中率は53.30%となります。(8,630/16,190×100=53.30)
このように、検査の精度は事前確率に依存しており、例えば人間ドックなどの検診での癌マーカーの検査はもともと癌の有病者が少ないため、
陽性になったとしてもこれだけでは癌とは判断できず、精密検査での確認が必要となります。